LASÉE BEAUTY MAGAZINE--下着できれいになる! 文・齋藤薫--
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Archive! 美の法則

© Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia
『小さな村の小さなダンサー』
8月21日より、Bunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座他、全国順次ロードショー
原作:「小さな村の小さなダンサー」 リー・ツンシン
監督:ブルース・ベレスフォード
出演:ツァオ・チー(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)、
ブルース・グリーンウッド、アマンダ・シュル、カイル・マクラクラン、ジョアン・チェン

肉体の奇跡に、ただただ目を見張り、涙する!

私たちは、自分の体にいかなる潜在能力が備わっているか知らない。それを、かくも美しい映像で見せられ教えられることに感謝したい気持ちにもなった。しかもこのバレエ映画は実話。そこにさらなる深い感動を覚える作品。

 全盲のピアニスト、辻井伸行氏が世界的なコンクールのひとつ、ヴァン・クライバーンで優勝した時、クライバーン氏は「まさに奇跡!」と絶賛した。自身も天才的なピアニストならなおさら、その完璧な演奏がどれほど奇跡的なことか、まざまざと思い知らされるのだろう。
 完璧なタッチと音の粒の端正さには、素人ですら唖然。なぜそんなことが可能なのか、何をどう考えてみてもわからない。それこそ"奇跡"という言葉でしか説明できない。でもそういうことも起こりうるのだと理解するための、おそらくたったひとつの方法が、"人は潜在能力の98%を実は眠らせたままである"という説を信じることだろう。なるほどそれならば、その奇跡も説明できる。視覚を閉ざされたから、98%のうちの何十%かを自ら目覚めさせた。眠っている能力が目覚めたのだと考えればわかりやすい。
 そしてこの映画の中のバレエシーンにも、明らかに人間の能力を超えた、超絶的なテクニックを見せられることになり、その98%の目覚めをふと思い出した。中国の小さな村にある小学校で原石として見い出され、英才教育を受け、アメリカのバレエ団に研究生として留学、しかしそのままやむなく亡命し、世界的なバレリーナとなる実在の天才ダンサー、リー・ツンシンの物語。
 ともかく随所に散りばめられたバレエに、人間の体はこんなに美しいのか? と目を見張るだろう。人間の体はこんな潜在能力をもっていたのかと息をのむ。そして感動する。だからあらためて気づくのは、本当に超一流のものを見せられた時、心が洗われるような清々しい感動を覚えて自然に涙が出ること。しかも、あらゆる種類の芸術の中でいちばん多くの人を同じレベルで感動させられるのが、人間が自らの体を使ってもたらす超絶技巧なのだそうである。絵画より音楽より、舞踏というわけだが、それも何の道具も使わず、まさに体ひとつで引き出す奇跡だからである。そして完璧な技術があると、まさに言葉よりもはるかに鮮明に、深い感情をそこに表現できるからである。
 家族愛、恋愛、師弟愛など、さまざまな愛の形が描かれ、物語としてもすばらしい作品だが、バレエ好きにはもちろんのこと、今までバレエ公演などには出かけていったことがないという人にこそ、実は見てほしい。人間の体に眠っている潜在能力の一部を目のあたりにする、それだけでも、何か体の中で湧き上がるものがあるはずだから。
 まるで羽がついたように高く長く跳躍し、まるで体重がないかのように、音もなく降りる技術、その美しさは圧巻。ともかく見て知ることが、自らの才能を目覚めさせる第一歩とも言われる。だから美しいものを見ると、美しくなる。美しさがまるで憑依するように。視覚に感動をつなげるのは、それだけで立派な美容。だからまずはひたすら見てほしいのだ。圧倒的な肉体の躍動を。